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MBTIとカーシー気質理論の違い

MBTIと気質理論

マイヤーズが作り上げたタイプ論を基に、デビッド・カーシーは気質モデルを作成した。二つの理論には違いがある。まず、この気質理論では心理機能を採用していない。これはマイヤーズが精神に焦点を当てたのに対し、カーシーが注目したのは観察できる行動であることに由来する。このため、マイヤーズの分類ではINTPとISTPは同じ内向思考型だが、カーシーの分類では異なる気質である。

<歴史>

人間のタイプを4分類する考えはアリストテレスの時代から存在したが、体液の割合が人の気質を決定するという四体液説を提唱したのは、ヒポクラテスである。その後、ガレノスが「胆汁質」「憂鬱質」「多血質」「粘液質」という名称を与えた。気質の影響は多分野に及び、ヴォルテールやカントなどの哲学者も気質に言及した。ブロンテ姉妹やトルストイは4種類のパターンを基に登場人物を構築し、カール・ニールセンは「4つの気質」という交響曲を作曲した。

<気質>

そもそも「気質」とは何か?これは性格の基盤となる先天的な生物学的、本能的な側面を指す。一般的に性格は遺伝要因と環境要因で形成されるものと考えられるが、「気質」は遺伝要因が強い特徴であり、これは子供時代から観察される。生涯を通じて変化しにくいが、環境と相互に影響し合う。気質には様々なモデルがあり、ビッグ5との相関性も報告されている。

カーシーはMBTIのコードを使用したが、これらの文字の意味をユング/マイヤーズと同義に解釈するのは適切ではない。SPのSは自発性(Spontaneous)、SJのSは思慮深さ(Sensible)を表す。同様にNFのNは直観(iNtuitive)、NTのNは独創性(iNgenious)を意味する。まとめると、以下のようになる。

SP:自発的で遊び好き
SJ:思慮深く賢明
NF:直観的で熱意がある
NT:独創的で理論的

カーシーはこの理論によってタイプを4気質に分類した。

SP:職人SJ:守護者NF:理想主義者NT:合理主義者
言葉多彩事実想像理論
行動効果的順法的倫理的効率的
才能戦術実務外交戦略
スキル肉体管理対人関係分析
態度遊び心冷静人道的実用的
予感楽観的用心深い信頼懐疑
対応現実志向運命志向神秘志向相手次第
時間今日昨日明日仕事次第
場所中央出入口通路交差点
プライド優美信頼感共感性独創性
自尊心勇気有用性思いやり決定力
自信適応性尊敬真正性独立性
ムード興奮憂慮熱意穏やか
信頼衝動権威直観論理
願望影響力所属ロマンス達成
性質寛大着実内省的好奇心旺盛

<SP:職人>

SPは外界の操作できるオブジェクトや、今ここで経験できるイベントに親しむ。手仕事に鋭い感覚を持ち、好きでもある。道具や機械に馴染みやすく、行動は可能な限り迅速に欲求を満たすことを志向する。他の人々が高リスク・不可能と見なす道でも突き進み、ルールを破っても目的を達成する。人に対しても気ままで、楽観的、性急な振る舞いは、彼らを抗し難く魅力的にする。

<SJ:守護者>

SJは分別があり、地に足の着いた人々である。社会制度の安定剤であり屋台骨。ルールに従い権威と協調することを信条とする。物事を荒立てるのは心地が悪い。システム内で堅実に働くことがSJのやり方であり、長期的な忠誠心、規律、チームワークが仕事を適切に完了すると考える。SJは製品やサービスを機能させる天性の才能を持つ。スケジュールに気を配り、超過や不足に鋭い目を向ける。変化が健全だとわかっていても、用心深い態度を取る。物事は慎重に進める方が良いと思う。

<NF:理想主義者>

NFは友好的な関係が、人々の目標を達成する最良の手段と考える。人々を引き裂く、紛争と利己性の壁を取り除くことを夢見る。異なる人々と協力する独自の才能を持つ。このような対人間の調和は夢物語かもしれないが、NFは「どうであるか」よりも「そうなるかもしれない」ことに焦点を当てる、救いようのない夢想家である。具体的、実用的な世界は出発点に過ぎない。世界は未知の可能性と潜在能力に満ちていると思う。自分が何者であるか、いかに最高の可能性を発揮できるか探求しようとする。同時に他者を刺激し、個人として発達すること、自身を満たすことを促す。直観や飛躍した信仰を通じた「目に見えない」、または「まだその時ではない」人生に対する高次元の見解は、NFにとって物質的な世界よりも遥かに重要である。

<NT:合理主義者>

どんな分野でも、NTは自然界に存在する複雑性を理解しようとする。NTは世界を形成する抽象的な原則や自然法則を知りたいと思うが、世界の複雑なシステムの構造や機能に興味がある。知識を得る際には徹底した実利主義者である。NTは政治的な正しさを気にしない。問題に対して、最も効率的で優雅な解決策を見つけたいと思う。有益なことを教えてくれる者には耳を傾けるが、時間やリソースを浪費する権威やルーチンを無視する。

カーシーは4気質を言動パターンによってさらに分類した。これを「気質マトリックス」と呼ぶ。

SPとSJは五感で知覚できる、外界の具体的で地に足の着いた対象について話すことを好む。NFとNTは想像力に頼った抽象的な概念(哲学、幻想、夢、理論など)について話す。

SPとNTは第一に効率的で結果主義であり、ルールに従っているかは二の次である。NFとSJは法律やルール、自身の道徳や倫理観に沿うことを重視し、行動が効率的・生産的であることは優先しない。


ここで疑問が生まれる。何故この組み合わせなのか?マイヤーズは知覚・判断の組み合わせで16タイプをSF・ST・NF・NTに分類したが、カーシーの分類には指標・心理機能ともに規則性がない。それは気質で分類しているからなのだが、それが意味するものは何か。

冒頭でも述べたように、カーシーは心理機能を採用していない。その理由は、心理機能は観察できず、主観的なものだからである。彼の見解では、タイプとは行動や役割から観察できる必要がある。以下がカーシーの主張の要旨となる。

・ユングとマイヤーズは外向型を「人や物に興味がある」、内向型を「アイデアや概念に興味がある」としているが、言動から観察する限り、アイデアや概念に興味があるのはN型である。

・ユングは外向と内向の違いを重視したが、この指標は人々の行動を予測し、理解する際に最も役に立たない。ユングは外向と感覚、内向と直観を混同しており、マイヤーズもそれを継承している。

・マイヤーズの指標は歪められている。例えば、外向は社交的、内向は内気に描写されている。

・ユングとマイヤーズはESTJとENTJを同じタイプ(外向思考型)に分類した。これに伴い、両タイプの態度や行動は似通った描写となるが、私の分類ではESTJは守護者(具体・協力)、ENTJは合理主義者(抽象・実利)である。

他にも色々と書いてあるが、要するにマイヤーズとカーシーは分類の基準が違う。つまり、マイヤーズの基準では心理機能が共通していれば、言動がどうであれ同じタイプになるが、カーシーの基準では言動が共通していれば、内面がどうであれ同じタイプになる。ただし、カーシーは心理機能を採用していないので、言動と心理機能をこじつけることはできない。

おそらく彼はスキナーのような行動心理学的タイプ論をやりたかったのだと推測するが、それが適切に反映されているか?というと疑問符はつく。指向が全く言動に反映されないわけではないし、気質が常にそのまま表れるわけでもないだろう。両者のタイプ描写は似ており、MBTIフォームMとカーシーのオンラインテストには強い正の相関があるので、何が違うのかわかりにくいが、意味しているものが違う。

マイヤーズにしろカーシーにしろ、いちいち細かい定義の差を区別してタイプを語るのは現実的ではないので、結局は「MBTI」として一纏めに扱うことになるが、各々にこのような違いがあることは知っておいてもいいだろう。

出典:
David Keirsey "Please Understand Me Ⅱ"
Stephan Montgomery, Ph.D. "People Patterns"

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